「この度はわたくしめなどをお召し上げくださいまして、誠に感謝を申し上げます」

 ツパイは再び深々と礼を捧げた。彼女の自宅に伝令がやって来たのは四日前のことだ。どうして王が彼女を選んだのか、彼女にどんな仕事を与えようとしているのかは、面会の際に明かすと告げられた。お陰で此処までずっと胸を巡る困惑は止まらず、そして今が一番のピークであるに違いない。

「んー、僕は君を雇うつもりじゃないんだけどね。ああ、無償だって言っている訳じゃない。もちろんその都度報酬は支払うけれど……君は僕の家臣になる訳じゃない」
「それは一体どういう……?」

 再び姿勢を戻しながら、言葉は途中で掻き消えてしまった。相対する王は満面の笑顔で、その向こうの景色は美しい花々が雫に濡れ、光を吸い込み、王に力を注いでいるかのように神々(こうごう)しく思えたからだ。

「まぁ、お茶でも飲みながら話そうよ。美味しいパンケーキでも焼くからさ」
「パン……ケーキ?」

 手にした霧吹きを棚に戻し、王は目配せをしてツパイの前を通り過ぎた。その歩みに引っ張られたように、気付けば彼女もスラリとした背に続いていた。



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