「スティ、ワタシは……」

 ──ジュエルに愛される自信がない。

 いつしかそう考えていた。

 しかしそれを告げてしまったら、ジュエルに失望を与えて生まれてきた彼こそが、自分を責めてしまうのだろう。例え彼女が自分個人の問題として、感じていることなのだと主張しても。

 現状王が所持する『ラヴェンダー・ジュエル』。宿主が子息に授けると決めた時、ジュエルは彼を認めるのだろうか? 彼が愛する彼女を愛するのだろうか──。

「アナタは……ワタシなどで、イイの?」

 ウェスティの手は、いつの間にかタランティーナの手によって握り締められていた。

「君以外に、誰が居る?」
「これから世に出れば、女性なんて星の数ほどヨ」
「だが君以上に、私を理解出来る女性なんて居ない」

 ──ワタシはアナタのどれ程を、理解出来ているというのだろう……?

 それでも自分を見上げるこの美しい瞳に、ずっと見詰められていたいという願望はあった。今はそれだけで良いのだろうか? 繋ぎとめる理由はそれだけでも──

「こんなワタシで宜しいのなら……謹んでお受け致します、ウェスティ」
「ティーナ!!」

 真摯な答えに喜び立ち上がった彼は、いつも通りでいつも以上の、愛に溢れた抱擁を捧げた。

「誓いの、キスを」

 彼の言葉に緊張した少女の(おとがい)が、柔らかく包み込まれる。

「愛しているよ、ティーナ……」

 ゆっくりと近付いた唇は、けれど今までとは違う情愛を持って、頬への口づけ以上に熱く官能的であった。全身を走る血は一巡したのち、逆流した気がするほど彼女の身を打ち震わせていた。