「……」
「??」

 遅めの朝食を終えたテーブルに、空の食器と重い沈黙が並んでいた。

「ユーシィ……?」

 あたしはあんな夢を見たお陰で、案の定早起きなどは出来ず、荘厳な朝陽も鮮やかな朝焼けも、飛行船滞在お初の今朝は堪能することが出来なかった。

 でもそんなことがこの不機嫌の原因ではないことを、こいつだって分かっている筈。昨夜のあの襲撃は一体何だ!? 冗談めかして終わりにされたけど、抱き締められたのは間違いない! 契約破棄にされたって文句は言えない身分ではないかっ!!

 困った顔であたしを呼んだラヴェルを前にして、ツーンとそっぽを向いてやっても良かったけれど、あたしは食後ひたすら彼の顔を凝視し続けた。どちらかと言えばほぼ睨みつけていたに違いない。怒っているのが分かっているのかいないのか、こいつは気まずそうに視線を逸らすことはなかった。

 まぁ、そろそろ解放してやるか。やっぱり「おかしい」って分かったから。

「……ねぇ、一つ訊いてもいい?」

 それでも少しためらいがちに切り出した。こいつにだって訊かれたくないことかも知れないのだから。

「どうぞ? ご遠慮なく」

 ラヴェルも昨夜の件を怒鳴りつけられるのかと覚悟していたのだろう。意外な切り口に微かに驚いたみたいだった。

「あのさ……あんたの右眼って、もしかして義眼?」
「ほぉ」

 間髪容れずに返された感嘆の声。

「鋭いね、ユーシィ。でも当たりは半分だよ」
「え?」

 そう言ってニヤリと笑い、そして──