「だから僕に任せてくださいと言ったではないですか~、タラ」
「ゴメーン! ちょっと腕が(なま)ったかしらネー」
「ツパイ! タラ! あ、アイガーも!」

 あたしは慌てて窓を閉め、巻き上がる粉塵の中から現れた、二人と一匹の影に飛びついた! 二年近く経っても変わらない、美女と子供と白黒の牧羊犬!! あ、ううん、ツパイは随分背が伸びている。

「キャー! ユスリハちゃ~ん!! 元気だったー? あっ、髪色、ピンク・グレーに戻したのネ! イヤーン、ピータンも相変わらず~!!」
「ムギュゥ~!」

 そしてこの豊満な胸の、窒息死必至な挨拶も相変わらずだ……。

「くっ、くるしっ! で、でも一体どうして急に?」

 タラの抱擁から顔を救出し、あたしは喜びで弾む質問を投げ掛けた。

「ウフーン、実はネー! ……と、その前に」
「え?」

 もったいぶった様子で解き放したタラは、あたしに格好の良いウインクを飛ばし、

「アレ……お先に直してもらえるかしら?」

 煙のおさまった背後を指差して、真っ赤な舌をペロッと出した。

 無残な姿で地面に横たわる飛行船──。

「ああ……はい。よ、喜んで……」

 後ろ髪を掻きながら笑うタラの後ろで、ツパイがゴメンと合掌していた──。



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