「ま、待って! この二週間を楽しいって思えたのなら、もっと続けよう! もっと……一緒に居てよ!!」
「ごめん……どうか、忘れて……『今』を忘れて……君は『明日』を、生きて……。僕は──もう……眠り、たいんだ……やっと……楽に、なれる……んだ、よ……。だから……笑って?」

 あたしに笑ってほしくて──あなたはいつも笑っていたの?

 ううん、きっとあたしだけにじゃない。辛くても哀しくても……あなたは皆に笑顔を見せてきたんだ。

 皆と仲良くなりたかったから……自分を受け入れてほしかったから。

 あたしはもう一度、彼の頬に触れた。先刻よりも熱のない皮膚。

「嫌よっ! 笑わない!! 消えないって言わなくちゃ、笑ってなんてあげない!! 消えないでっ、消えないで!! 早く教えて、ラヴェル!!」
「ユー……シィ──」

 困ったように、微笑むラヴェル。

 嫌だ……嫌だ……あたしを置いていかないで!!

 誰か助けて、誰でもいい……おじいちゃん、父さん、母さん!! ──母さん!?

「あ……」

 もしかして──!?

「みん、な……さ……よな……ら──」

 ラヴェルが最後の力を振り絞って、ニッと笑ってみせた。あたしはその両頬を包み込んだまま、ジュエルに向けて叫んでいた。



「ラ、ラヴェル=ミュールレイン!!」



 閉じられた左の瞼が、光のエネルギーに耐えきれず開き放つ!

 あたしの唇は、気付けばラヴェルのそれに触れていた。まるで宝石のような、血の気のない冷やかな感触。

 お願いっ──どうか間に合って!!

 あなたのことが大好きなの……



 あなたのことが……──ラヴェル──。