「ラヴェル……デリテリート?」

 恐る恐るの呼び掛けに、その途端ジュエルが僅かに反応を示した!

 彼が選んだ『パスワード』の前半は、『ラウル=ヴェル』じゃなくて『ラヴェル』なんだ!!

「ラヴェル=アイフェンマイア!」

 再び同じ僅かな反応──ラストネームはともかく、ファーストネームはラヴェルなのだと、あたし達は確信し頷いた。

「ジュエ、ル……よせ……」

 (かす)れた声が苦悶の彼から途切れ()でる。ジュエルはもちろん祈りの解除を願うだろう。誰も好き好んで消されたいなどと思う筈もない……そう……そうよ、ラヴェルだって──。

「ラヴェル、お願いよ……鍵の名前を教えて! ラストネームは何にしたの!?」

 彼の定まらない焦点が、ふとあたしの必死な眼差しに()まった。苦しいのに辛いのに、やっぱり描かれる微笑み──どうして!?

「ユ……シィ。も……いい、んだ……君が……好きに、なって、くれた……こと、君が……自分の名を……呼んでくれた、こと……とっても嬉し……かった。君と……居られた、この、二週間……ほんと、に……楽し、かった、よ……この、想い出……あれ、ば……僕は……幸せ、に……消え、られる……」
「ラヴェル……?」

 ラヴェルが初めて……自分を『僕』って言った──?

 やっぱり彼だって消えたくないんだ! だからこそ……彼はついに自我を見せた!!