「ど……いう、こと……?」

 『鍵の付いた祈り』──その鍵を、あたしが開ける──?

「ラヴェルが止められないと言ったのは本当なのです。この鍵付きの祈りは自身では解除出来ません。ですが……ジュエル継承者が愛し、そしてジュエル継承者を愛する者であれば……その鍵を開くことが出来ます」

 それって──!!

「つまりラウルの好きなユスリハちゃんが、ラウルのことを好きな今なら……この祈りを止められるってことネ?」
「はい」

 絶句したあたしの目の前の、タラの質問にツパイが即答した。

 だから……だからラヴェルは、あたしが彼を好きにならないよう祈ったの!?

「鍵は通常ジュエル継承者の名前です。ですから──お願いします、ユスリハ」
「う、うん」

 とにかくもう時間がない。彼の名前──どっちだろう?

「ラウル=ヴェル=デリテリート!」

 ジュエルは反応しない。

「じゃ、じゃあ、ラウル=ヴェル=アイフェンマイア!?」

 やはり何も変わらなかった。

「ツ、ツパイ~!!」
「ふ……む。どうもひねりが加えられているようですね……」

 ツパイの焦燥の横顔が、ゆっくり首を(かし)げた。

 どうしよう……ラヴェルの呼吸が益々浅く小刻みになっていく──ラヴェル──ラヴェル!?