「ジュエルは何物にも屈しない……砕くことも出来ないし……地中に埋めても自力で戻ってきてしまう。だから消し去るしか、ないんだ……」
「だ、だからって! あなたが犠牲になることないじゃない!! ジュエルは意思を持つんでしょ? 時間が掛かっても何とか説得すれば──」
「無理、だよ……継承して三年、ずっとジュエルに、訴えてきたんだ……でも、ジュエルは……受け入れなかった……」
「ラヴェル……」

 あたしは一言彼の名を呼び沈黙した。目の前の淡い微笑が、本当に哀しそうだったから。寂しそうだったから──彼は……ずっと『独り』だったんだ──。


「お願い、ラヴェル。もう一度考え直して? ジュエルに一緒に願お? みんなで、ヴェルの人達全員で! そしたらきっとジュエルも分かってくれる!! だから、ね! お願いだから……祈りを止めてっ!!」

 いつの間にかあたしの手は震えていた。その手でそっと彼の頬に触れる。温かい柔らかい頬。この感触が消えるなんて……信じられない、信じたくない!

「ありがと……ユー、シィ。でも、この祈りは、止められない……それに、もう、そろそろ、だよ……ジュエルも随分、抵抗したけど……あと数分で、消えると思う……そ、すれば……君の、この、哀しみは……終わるから──」
「嫌よっ、嫌だ……お願いだから、死なないで!!」
「死ぬ、んじゃない……元から『なかったこと』に、なるんだ……」

 そうしてついに、ラヴェルは瞳を閉じた!

「ユスリハ、彼の名前を片っ端から呼んでください」
「え!?」

 いきなり変なお願いをするツパイの言葉に、再び見開かれるジュエルの瞳。



「貴女が、祈りの『鍵』を開けるのです──」



 揺らいだ前髪から、ツパイの初めて見えた紅い瞳が……僅かに光り輝いた──。