「えっ!?」

 そしてあたしの驚きの(まなこ)は、もう一度ラヴェルに戻された。やっぱり……ラヴェルは消えようとしてるんだ……ジュエルと共に。

「ラヴェル……貴方はジュエルに対し、ジュエル自身の消滅を願ったのでしょう? ヴェルの全ての民の為に」
「……」

 返事のないことが、ツパイの問い掛けの答えを肯定していた。

 でも……どういう意味? ヴェルの全ての民の為って?

「ツパイ……どういうことヨ? 説明してちょうだい」

 困惑してラヴェルとツパイを見回すあたしの首が、タラの質問で止められた。

「ラヴェルは以前から、ヴェルの在り方に懸念を(いだ)いてきました。ジュエルに守られた平和な世界──その在り(よう)が継続して良いのかと」

 其処で一旦口を閉ざし、ラヴェルへ顔を向けるツパイ。その意を汲んだように、ラヴェルは荒く息を吐き続ける唇を動かした。

「いつまでも……守られてるだけじゃ、ダメなんだ……守られていたら、本当には分からない……悲しみも苦しみも……そこから生まれる、生きる喜びも……それを……ユーシィ、君が証明してくれた……」
「──え?」

 潤んで揺れる漆黒と薄紫の瞳が、あたしを捉えて放さなかった。ラヴェルは──ちゃんと分かっていたんだ。どんなに辛くても、人は真実を受け留めて、自分で立ち上がらなければいけないのだと──!