「ラヴェル! ラヴェル!! どうして『なかったこと』にしようとしてるの!? お願い、教えて! 理由が分かれば、何か手立てが……やっとジュエルが自由になったのよ! あなただって自由になればいい!! あたしを……もう独りにしないでっ!!」

 涙混じりの大声に、ラヴェルはまた嬉しそうな笑みを見せた。嫌だ……もう、離れたくないって思ったのに……どうして消えようとしてるのよ──。

「ジュエルが在る限り、自分は自由になれない……それにユーシィは……独りじゃないよ……タラやツパが協力してくれる……君には沢山の友達も居るし……自分なんか要らない筈だ……」
「バカなこと言わないで! あたしにはラヴェルが必要なの!! あなたが居なくてどうやって恋をしろって言うのよ!?」
君の気持ち(女心)が分からなかった自分なんて……きっとこれから、君にはもっといい男が現れるよ……」
「バ、バカ──!!」

 あたしは思わず彼の襟元に掴みかかっていた。横にはお手上げといった様子の、困った顔で溜息をつくタラ。誰か、お願い……彼を止めて──!

「……やはり、僕の予感が当たってしまいましたか」

 瞬間、背後から聞こえた声に、タラとあたしは顔を向けていた。おそらく急いで駆けてきたのだろう。大きく肩を上下させ息を弾ませる、鼻先まで髪の流れるその姿は──。

「ツ、パ……」

 そう名を呼んだラヴェルの(おもて)もまた、困ったように溜息をついていた──。