「「ユーシィ……」」

 ラヴェルとウェスティ。二人の声が重なった。

「ユスリハ……ちゃん?」

 あたしの腕の中から震えるタラの声も聞こえた。良かった……無事だ。そして──あたしも。

「ウェスティ」

 あたしは立ち上がり振り返って、背後で剣を降ろすウェスティに声を掛けた。

「あたしを連れていってください」

 左手に抱えた──ラヴェンダーの花束を胸元へ引き寄せ、彼の瞳に懇願する。

「……そうまでしてタランティーナを救いたいと?」

 あたしの願いに驚き駆け寄るラヴェルは、再び上げられたウェスティの剣で動きと言葉を止められた。

「はい。あたしを、信じられませんか?」
「そうだな……」

 ウェスティの左の口角が愉しそうに上がってみせた。視線はあたしを舐めるように全身を蠢き、その左眼は……やはりあのザイーダの黄色い眼だった。

「地色の髪を以前のように流し、私が(しつら)えた純白のドレスを身に(まと)う……ラヴェンダーのブーケを手に、なんて……随分良く出来た演出だ」
「貴方と再会する時は……これが相応(ふさわ)しいと思ったまでです」

 そう……この白いドレスこそが、あの飛行船に取りに戻った『忘れ物』だった。そして髪色を戻さなかった理由は、ミルモへの想い以外にもあったのだ。

「まぁいい。私も今後のことを思えば『花嫁』は必要なのだから」

 依然ラヴェルを尖端で捉えながら、ウェスティはあたしを胸の内へ収めた。左手はタラに刺されて、血液を流しながら下へ垂らされたままだ。あたしの白いドレスを汚したくないと思ったのだろう。