「ウェスティ……()るなら早く殺りなさい」

 その時二人の闘いを止めてしまう程の哀しげな声が聞こえた──タラ。

「タラ……?」
「ほう……ついに観念か。君らしくもないが」
「青春を捧げたアナタに、命までも捧げてあげようって言うんじゃない。男冥利に尽きるでショ?」

 タラは横倒しの上半身を辛そうにもたげるも、その瞳は未だ誇りという輝きを失ってはいないように思われた。

「タラ! やめろ!!」

 剣で行く手を阻まれたままのラヴェルが必死な声を上げた。きっと……タラはラヴェルを好機に導く為、自己を囮にしようとしている……それを感じたのだと気付かされた。

「ウル、彼女との最期を邪魔しないでくれ」
「ぐふっ──」

 云うやウェスティの右眼(ジュエル)が光った。両手の剣がその光を吸収し、それは波動となってラヴェルを吹き飛ばし、背後の幹へと打ち付けた。背中の衝撃が肺の中の酸素を一気に吐き出させる。

「さて……どうやって命を奪われたい? こうしている間にウルにチャンスを移そうとしているなら無駄な話だ。以前よりは成長したようだが……剣も魔法も私の方が(まさ)っている」
「そうネ。それにラウルは左眼が見えない上に、ミルモに力を使って疲労困憊ヨ。彼にアナタが倒せるなんてはなから思ってないわ」
「ほお? あの毛先の黒みは、単なる趣味かと思ったが」

 え──? ウェスティはジュエルの偽りに気付いている!?

 やっぱり二度も同じ手に掛かるような簡単な相手ではないのだ……そしてそれを知りながら、あたしがミルモを癒すまで、ウェスティはラヴェルに時間を与えた──それだけの自信と余裕があるということだ。