が──。

 コテージのエントランス手前であたしの手足は機能を止めた。満面の笑みも何処かへ忘れてきたように、すっかり消え去り口角が下がってしまう。

「ユスリハ」

 斜め後ろからツパイが呼び掛けたけれど、あたしは振り向いたものの返事が出来なかった。

「もう一度笑ってください。これから始まる闘いは、未来への第一歩なのです」
「ツパイ……」

 湧き上がる不安が、つい涙を溢れさせる。それを何とか収め、あたしは「うん」と一つ、頷き一度夜空を見上げた。

 そうだよ……あたしが怖がってちゃダメなんだ。二人を励ませなくちゃ、あたしの居る意味なんてちっとも無い。

 大きく息を吸ってツパイに笑顔を見せる。返ってきた微笑みは、あたしがちゃんと笑えていることを教えてくれた。

「たっだいまー!」

 勢い良く扉を開き、大声をリビングへと向けた。途端大きな破裂音と、小さな色紙やリボンがあたしの頭に……山盛りになった!?

「……へ?」
「タラ、これって人に向けちゃダメなんじゃないの?」

 唖然としたあたしの声と、ラヴェルの呆れたような問い掛け。

「あらん……そうなのぉ?」

 二人の手には淡い煙の立ち昇るクラッカーの空筒があった。

「まぁ大丈夫だったみたいだからイイじゃない! 何はともあれ~」

 振り向きラヴェルを適当にあしらったタラが、再びこちらに笑顔を戻し、それから先刻のあたしみたいに大きく息を吸った。その唇と──



「「ミルモの復活成功、おめでとー!!」」



「あっ──」

 ──ラヴェルの唇が、同時にあたしに祝福を刻んだ。