麗しき 乙女よ     ()の花を 手になさい

 その(いろ)と その薫り   癒しの 力を



「あっ……!」
「思い出しましたか?」
「う、うん……」

 そうだ……うちの傍には花畑がなかったから、母さんは殆ど街の花市場で材料を買っていた。でも数回だけど花畑に仕入れに行ったことがある。それはラヴェンダーだっただろうか? 確かにその唄を歌っていた!

「続き、分かるわ……こうでしょ?



 揺れる 紫は       (かれ)の なびく髪

 その手 いつか取って   微笑み 返すの



……よね?」
「そうです」

 ツパイの唇がニッコリと微笑んだ。あたしも応える。そう……ラヴェンダー色の髪の彼──ラヴェル。

 あたし達はもう一度初めから口ずさんで、数束のラヴェンダーを摘んでいった。



 麗しき 乙女よ     ()の花を 手になさい

 その(いろ)と その薫り   癒しの 力を


 揺れる 紫は       (かれ)の なびく髪

 その手 いつか取って   微笑み 返すの



「「その唄は……!!」」

 ──え?

 あたし達の唄を聞いた二つの影が驚きの声を上げ、あたし達は手を止め、身を起こし振り向いた。

 其処には──

「おじさん? ……あっ……ミルモ!?」

 眼を見開き固まったおじさんと、その向こうにアイガーを連れたミルモが、同じような表情で立ち尽くしていた──。