「あの子、ちょっと焦ってるのかもネ。ワタシがヴェルに戻っていて、しばらく稽古が出来なかったから。大丈夫ヨ、あの子ならすぐに遅れを取り戻せるわ。さ、ユスリハちゃんの美味しい朝食が冷めない内に戴きまショ! それから途中で声掛ける合図も決めて置かないとネ!」
「は、はいっ」

 ……そうだよね。ラヴェルだってきっと先が不安で仕方ないんだ。なのにあたしばかりが慰められている。こんな自分でどうしてミルモを癒せると言うの? ちゃんとしなくちゃ、しっかりと、じっくりと。

「ユーシィ~さすがにお腹が空いた! 早く来ないと食べちゃうよー!」

 戻ってきたラヴェルがダイニングのテーブルから、既にソーセージを刺したフォークを掲げてあたしを呼んだ。気持ちを切り替えてきたのだろう。洗った顔は心の中と同じくサッパリしている。

「タラが戻るまで待ってなさいよーっ」

 口元へ寄せたフォークを押さえてあたしは笑う。対抗しようと大口を開けたあいつの顔もいつになくにこやかだ。それを肩に留まったピータンと、後ろで伏せていたアイガーが、キョトンとした目で見詰めていた。

「ちょおっと~ワタシの居ない間に何イチャついてるのー? 折角だから見せなさーい!」
「タ、タラっ、イチャついてなんかっ──!」

 こんな楽しい日々がずっと続いたらいいな。

 ツパイとタラとピータンとアイガーと、そしてラヴェルとあたし。四人と二匹の楽しい日々が──。