さて……でも、どうやって二人を中断させよう?

 窓を開くことさえ気の引ける張り詰めた空気に、つい呆然と立ち尽くしてしまう。手にしているのは真剣なのだ。やたらに声を掛けて怪我でもされたら大変だし……うーん……?

「まだまだイケるんじゃないの~! ラウル!!」

 その時今まで一言もなかった闘いに、タラの挑発的な言葉が響いた。これってもしかしてチャンスかも!?

「あ、あのっ、タラ……!」
「ん?」

 急ぎ窓を開けて呼び掛ける──が!

「おおっとぉ……」

 タラはあたしに苦笑いを向けながら、目の前に降ってきたラヴェルのソードを、レイピアの(つば)で寸前受け止めていた。


「タラ。幾ら相手が自分だからって油断し過ぎだ」

 ラヴェルは冷静な表情と口調のまま、芝生に投げてあった(さや)を取りに行き稽古を終えた。

「違うわヨォ~だって美味しい匂いがしてきたんだもの、ネェ、ユスリハちゃん!」
「す、すみません……朝食の支度が出来たって、ずっと視線を送っていたんですけど、なかなか気付いてもらえなくてつい……」

 あたしは身をすくめて謝った。ヘタをすればタラの綺麗な顔に傷が付くどころか、大怪我や死ぬことだって有り得るのだ。

「ごめん、ユーシィ。自分が悪いんだ。それに気付ける程の余裕が自分にはなかった」
「え……」

 リビングに上がろうと目の前を通り過ぎる薄紫色の影が、バツの悪そうに謝罪をした。部屋へ促すようにそっとあたしの頭を撫で、洗面所に向かって消えてゆく。少し悔しそうだったその言葉に何も返せず、立ち止まってしまったあたしの肩を、後ろからタラが優しく抱き留めた。