「さぁ、て。そろそろ会計してもいい? 自分は飛行船に残りの荷物を取りに行くから、二人は先に戻ってくれる?」

 ラヴェルは懐から幾つかの金貨を取り出しながら、比較的タラの方へ向けその言葉を発した。

「ワタシは構わないけど、どうせならユスリハちゃんを連れていってあげなさい。あの丘からの夜景は絶好のデートポイントじゃない!」
「タ、タラ~!」

 まだそんな話が続いていたのかと、あたしはついぼやくように彼女の名を呼んでいた。あ……でも! それはちょうど良いチャンスなのでは!?

「あの……忘れてきた荷物があるんだっ。あたしも一緒に行っていい?」
「ほら、ユスリハちゃんも、デートもチューもしたいのヨ」
「ちっがいますっ! 本当に忘れ物があるんですっ!!」

 どうやってもタラには勝てないらしい……。

「了解。それじゃ、気を付けてね。ユーシィ、行こう」

 ど、どっちに対してあんたは「了解」って言ったのよ!?

 「ゆっくり楽しんできてネ~」とハートマークの付いた別れの言葉にゲンナリしながら、あたしはスタスタと歩くラヴェルを追った。ふと後ろを振り向いた時既に、タラの両側には光に集まる夜の虫が、沢山彼女に惹き寄せられていた──!