「ネェネェ~ユスリハちゃん!」
「え?」

 ちょうど思考をオフにしたところで、隣のタラから呼び掛けられた。あれ? 何の話をしていたのだろう?? 何か……やっぱりいやらしい視線……。

「城壁一周、終える頃にちょうど夕焼けになったでショ? あの時間を狙って北西の砦はカップルだらけになるらしいのヨネ~! 二人もチューくらいしてきたのかなぁ~って、ラウルに訊いても答えないからぁー」
「……えぇ!?」

 あたしはもう一度脳ミソフル回転して、目の前のラヴェルに視線を移した。ニコニコ顔で海老の尻尾にかじりつくあいつは……どうして否定しないのよっ!?

「し、し、し、してませんって!! ちょ、ちょっとあんたもちゃんと弁解しなさいよねっ!」
「してもタラが信じないのは、もう何となく分かってるでしょ? ユーシィでも」
「うっ……」

 確かに……!

 今までの色っぽい質問や疑惑は、ラヴェルの言う通り完全否定出来た試しがなかった。図星の意見に言葉を詰まらせたあたしの隣で、勝手な妄想を愉しむタラは「ワタシも誰かイイ人見つけヨーっ!」と、独り対抗心に燃えていた。