「さ、そろそろ進もう? 暗くなる前に戻らないとタラが愚痴を言いそうだし、その前に君に見せたい場所があるんだ」

 ラヴェルの手が促すように力を込め、そして肩から離れた。見せたい場所? いやその前に、どうしてラヴェルはこんなにこの街に詳しいんだろう?

「ねぇ、此処には前にも来たことあるの?」
「ん? いや、初めてだよ」

 先を歩き出したその背は、前を向いたまま意外な返事をした。初めてって……ガイドブックでも熟読したのだろうか?

「テイルも、アイガーも……その居場所や状況は、ラヴェンダー・ジュエルが教えてきたんだ。そして此処が最後の場所。ジュエルが自分に、遺された人達を救えと訴えてくる……まったく律儀な宝石だよね」
「ジュエルが……?」

 終わりの台詞は呆れたような(わら)いが込められていたけれど、それでも彼が自身の意志で、その願いを叶えているような気持ちがした。頼まれたからこなしている──そんな安易な覚悟で出来る事柄ではないからだ。それに目の前を歩む足取りは、沢山の想いを宿したように凛として、スッと伸ばされた背筋にも、深い哀しみを抱き締めた大いなる決意が満ち満ちていた──。



■タラが向かったカフェテラス?(右側)



■細い城壁小道



■城壁小道からの風景



■噴水(その向こうにアイスクリーム屋)



■南に広がる海