ラヴェルは自分のペースにならないようにと気を遣ったのか、あたしを先に歩かせて、その後を楽しそうについて来た。街の南面に到達し、突き出た広場でふと足を止めた。見えるのはただひたすら海と空。風が少しずつ冷ややかになり、夜が近付いているのが感じられる。ラヴェルはあたしの後ろを追い越して、左隣で同じ方を望んだ。

「ね……やっぱり、義眼だから左眼は見えないのよね?」

 彼がわざわざ左に並んだのは、そういう意味なのかと問い掛けた。

「うん、そうだよ」

 訊かれたくないことではなかっただろうか? それでもラヴェルのあたしを見下ろす微笑みは変わらなかった。

「ラヴェンダー・ジュエルだったら……見えるの?」

 遠慮がちな質問は、あたしの声を微かに()らせた。

()えるよ。──必要以上に」

 そうなんだ……ウェスティは魔法も使える上に両目が見える。そしてもう微力の魔法しか残っていない片目のラヴェル。どう考えてもハンデが大きい。