「じゃ、荷物を部屋へ。片付けが終わったら街へ降りよう。たまには気分転換に外食でもしないとね」

 その言葉を機にソファからツパイを抱え上げたラヴェルは、ピッタリくっついて離れないピータンと、ツパイにべったりのアイガーと共にリビングを出ていった。タラは「新鮮なシーフードには白ワインヨネっ」と独り盛り上がりその後へ続く。そしてあたしも一足遅れで、与えてもらった風通しの良い自室の扉を開けた。

 露骨な華美ではなく、シンプルで使い勝手の良い装飾と造り。東と南に大きな窓があり、朝陽も気持ち良く感じられそうだ。南に見えるベッドの向こうには、手入れの行き届いた芝生の絨毯と、暑さを和らげてくれそうな大樹があった。

 これから……どうなるのだろう──。

 作り付けの戸棚の上に荷物を置き、その下の引き出しに衣服をしまいながら溜息をつく。本当に……闘うのだろうか? ウェスティとラヴェルが。従兄弟同士の彼らが。

 それを見守るタラの想いは? そしてあたしの気持ちは?

 いや……その前に、何か一つでも役に立てる自分になりたい。

「ラヴェル……」

 どうしてだろう? あたしはあいつの前で、ずっと彼の名を呼ぶことが出来なかった。

 いつか笑って呼べるだろうか?

 好きになってしまった──かも知れない、優しいラヴェルの漆黒の瞳に──。



■街と海



■城壁北面



■北門上部(実際は西門)



■斜面のコテージ(彼らが選んだのは平屋です)