「タラ、どうして街の中に泊まらないんです?」

 あたしは荷物を降ろし、リビングを隅々まで見渡した。白に統一された清潔で解放感溢れた大部屋。南側は一面ガラス張りで、生け垣に囲まれた広い庭園と、遠くに一本水平線が見える。

「街は建物がぎっしりしていて、これだけの庭を確保出来ないのヨ。ほら、剣術の鍛練しないとでショ? 隣家は結構離れてるし、裏手の上にも家はないし、周りからは早々怪しまれないかと」
「あぁ……はい」

 納得しながら改めて緊張した。到着してずっとはしゃぐ旅行客ばかりを目にしていた所為か、あたしはすっかり目的を忘れていたのだ。そうだ……この地には人助けと仇討ち(?)に来ているのだった。

「部屋割りだけど、どうする? ユーシィは東南、ツパが東北、タラが西南で、自分が西北……でいいかな?」
「ワタシはそれでOKヨ。ツパイも寝てるばっかりだから、涼しい北側でイイんじゃないかしら? ユスリハちゃんもそれで構わないわヨネ?」

 ラヴェルの提案にタラは即答し、お次にあたしへ同意を求めた。「ココはあの子を立ててあげて」と内緒で(ささや)かれ、レディ・ファーストを通したいラヴェルの意を汲んで、それでも申し訳なさそうに受け入れた。

「え、ええ……」