「ふわぁ~凄かった!」

 辿り着いた麓でゴンドラから押し出されてすぐ、あたしは膝に両手を突いて大きな息を吐いた。あれ以上乗っていたら窒息死か圧死でもしてしまいそうだ。ピータンやアイガーはペチャンコにならなかっただろうかと、思わず二匹の様子に目を向けた。

「全員無事だったみたいだね。じゃあ行くよ」

 一番の大荷物を抱えている筈のラヴェルは、それでも涼しい顔をして海と街を左手に歩き出した。すぐ先に街への入口である堅強な北門が見えたが、其処には入らず真っ直ぐ道を進む。五分程して現れた別の事務所にタラと赴き、外で待つあたし達の前に戻ってきた時には、其処の従業員らしき男性を伴っていた。

 あたしの国から随分離れたとはいえ、語源は同じなのでそれなりに言葉は聞き取れる。けれど文字は全く違っていて、何の事務所なのかまでは分からなかった。

「コテージの管理事務所ヨ。此処では宿じゃなくて、短期滞在型の一軒家に泊まるの」

 疑問を抱えたまま落ち着かないあたしの視線に気付いて、隣を歩くタラが教えてくれた。これからその物件を数軒巡って選ぶのだという。

 緩やかな坂を登り、眼下に街が一望出来るほど上がった斜面のコテージは、平地で通りに面した一軒目の物件を、渋ったラヴェルとタラには好条件だったらしい。二人は即座に顔を見合わせニッコリ頷き、そのコテージを即決した。