着陸前にまとめておいた荷物を担ぎ、あたしは船の扉を押し開いた。其処から同じようにリュックを背負い、大きな鞄を下げたタラと、小さな荷を背中に結わえたアイガー、そして眠りに落ちたツパイをおんぶしたラヴェルが、肩にピータンを乗せて現れる。閉じないようにドアを抑えたあたしの後頭部へ、初夏とは思えない熱い太陽が注いでいた。

 この丘はこれから向かう街と海を見晴らす景勝地として、沢山の旅人が訪れるらしい。そのため街の北面を行き来するゴンドラが常時動いていて、その管理事務所が飛行船の出入りや停泊管理をしているのだという。

 ラヴェルは胸の前にもリュックを抱えながら、あたし達をゴンドラの昇降所へ導いた。タラがチケットを購入し、全員で四角い箱のような大きなゴンドラに乗り込んだ。

 眩しい陽差しが溶け込んだ、キラキラの波を立てる美しい海。飛行船からも見えたオレンジ色の街は、尚一層近くなった所為か、その色にも少しずつ濃淡や形の違いが見え、それぞれ個性があることに気付かされた。そんな視界から斜めに昇ってくるゴンドラがすれ違ったが、その中は観光客で溢れかえっている。降りるこちらもギュウギュウ詰めで、あたしの頬は軽くガラス面に押し付けられていた。

「大丈夫? ユーシィ」

 ツパイを背負っている為に両手が塞がっているラヴェルは、隣でどうにかバランスを保ちながら、あたしの横顔に問い掛けた。苦笑いで相槌を打つあたしの真後ろでは、長身外国人からの熱烈アタックを受け流すタラ。やっぱりこの美貌とスタイルなら、引く手数多(あまた)は当たり前か。