「やったー!!」
「おめでとう、ユーシィ!」

 両腕を掲げて喜びを表すあたしに、明るく投げ掛けられる祝福の言葉。あたしはそちらを向いて上方の両手をあいつに寄せた。

「ありがとう、ラっ──」

 ハイタッチしたお互いの掌が、パチンと勢い良く重なった──だけなのに。

「……? どうかした、ユーシィ?」

 何だろう、真っ正面に相対することが、いやにやけに面映(おもは)ゆい。

「う、ううん……えっと~あたし、タラに自慢してくる!」

 自分の気持ちに戸惑った所為か、立ち上げた身体がバランスを失い、続いて身を起こしたラヴェルの胸の中に飛び込んでいた。

「大丈夫?」

 どうも大丈夫でないような??

「ご、ごめん~つまずいちゃった! ……それじゃっ、行ってくるね!」

 今までどんなに抱き締められても、こんな風に顔が熱くなることなんてなかったのに──。

「自分はゴンドラの管理事務所に停泊手続きをしてくるから、タラと適当にしてて」

 ゴンドラの管理事務所?

「は、はーいっ」

 訊ねたかったけれど、赤面した顔を見られるのが嫌だった。あたしは向けた背をそのままに、お先に操船室を後にした──。







[註1]クロアチアのドゥブロヴニクという世界遺産の街をモデルにしております。