そんな料理を称賛しながら全てを平らげてくれたあいつは、その後雑用を済ませ、あたしを操船室へ(いざな)った。遠く東南に遙かに続く海が見え、それに近付くにつれラヴェルの昨夜話した街が見え始めた。

 クラウシア国・トゥーヴルーニーという街。(註1)

「あの街、全部屋根がオレンジなの?」
「そうだよ。観光地だからか、景観の統一に努めてるらしい。新鮮な魚介類も多いから楽しみだね」

 嬉しそうに細められた瞳がこちらを望む。良かった……いつものラヴェルだ。

「さて……飛行船は手前の丘に降ろす。ユーシィ、独りでやってみる?」
「えっ!」

 と、そんな安堵の心が一波を立てた。独りで……出来るのだろうか?

「もちろん隣に居るから。大丈夫、丘の頂上は平坦でとても広いんだ」
「うん……」

 あたしは励ます言葉に支えられて、見下ろす為に背伸びしていた身体を操縦席に滑らせた。その位置からは計器の間に真っ直ぐ前方を見据える窓と、足元の向こうを確認出来る小窓がある。ゆっくりとラヴェルが横に腰を降ろし、緊張の横顔を温かく見上げた。