「ほら、今日は練習用のレイピア・フルーレじゃなくて、サーベル系のロングソード持っていってる。やっとあの子も本気になったのヨ。その重い腰を上げてくれたのは、きっと昨夜のアナタネ」 

 レイピア? サーベル?? ロング……ソード!?

「な、なんか物騒な単語が聞こえたんですが、それって!?」
「もちろん、ウェスティとの闘いに備えてに決まってるじゃない」

 まるで当たり前と言うように、タラはあたしにウィンクを投げた。

 今一度呆けたままのあたしの許へ戻り、見つけたミニトマトを口へ放り込んで頬杖を突く。

「ジュエルを持たないラウルが魔法で勝てる訳ないでショ? もうワタシ達には武力行使しか残ってないのヨ。まぁ心配しないで~あの子まだまだだけど、強くなる素質は持ってるから」
「はぁ……」

 言われてみれば確かにそうなのかも知れない。それでもあたしは何処かで『魔法vs魔法』みたいなお伽話の対決をぼんやりと思っていた。そして其処でやっと気付いた。昨日も今日もあいつの姿が見えなかったのは──!

「あのっ……彼、もしかして昨日から……」
「ん? あ、そうそう。格納庫で剣術の練習中。グライダー傷つけたらタダじゃおかないんだからっ」

 タラはふざけて拳を握ってみせたけれど、あたしは更に意気消沈してしまった。またあいつは独りで抱え込もうとしてるのだろうか? あたしは何も役に立てないのだろうか?