「……その件はそれで終わる。でも多分、それでは終わらない」

 ラヴェルは一口だけつけたグラスを覗き込むように俯いた。

「ウェスティのこと?」

 うん、と一つ頷かれた後、更に言葉は続く。

「彼はこちらが何をやっているか知っている。だからすぐには現れない。自分が最後の一人を癒し、体内に疲れを溜め込むのをきっと待つ。だから……しばらくは襲ってこないよ」
「ご、めん……」
「え?」

 何とか絞り出した謝罪の言葉に、ラヴェルはもう一度驚いた。

「あたしがあっちへ行かなければ、ラヴェンダー・ジュエルを取り戻せる良いチャンスだったかも知れないのに。結局振り出しに戻っただけじゃない」

 ジュエルも救い出されたかったのに……あたしだけが救われてしまった。

「そうでもないさ」
「え?」

 ラヴェルに続いて俯いたあたしは、ラヴェルに続いて驚きの言葉を返していた。

「何も得られなかったかも知れないけれど、何も失うことはなかった。これは大いなる結果だよ。まだ何とかなる余地があるってことさ」
「そ、そういうものなの?」
「あちらにジュエルがありながら、これだけ出来たのはなかなかの状況と言える」

 あたしを不安にさせまいと何となく丸め込まれた感も否めないが、ラヴェルの自信に満ちた言葉と微笑みに、とりあえず自分を納得させた。