飛行船は東南へ向かっていた。今日一日はツパイの貴重な時間を分けてもらい、自動操縦の全てを伝授いただいた。実際この技術はあたしの国にはなくて、ヴェルで独自に発展したのだそうだ。試験に出ないのは助かるけれど、こんな素晴らしい設備が広められないことに、少し残念な気持ちもした。

 その間にタラは、リビングの床に積み重ねて置いた衣服や化粧道具を、空けてもらったチェストに収納し直していた。そしてラヴェルは……何処に居たんだろう? お昼と夕食の前後にはキッチンで見かけたけれど、それ以外は姿を現さなかった。操船室はあたし達が占拠していたし、一体何をしていたんだか?

 ちなみにラヴェルとツパイのカプセルは落下した物を回収し、あたしのカプセルは探す間がなかったそうで、格納庫から予備のカプセルと新品のブランケットを(しつら)えてくれたそうだ。そんな新しい匂いのするお布団に、この夜もくるまってはみたものの、どうしても気持ちが落ち着かなかった。仕方なく暗闇の中リビングに戻り、隣の扉をノックしてみる。すぐにそれは開かれ、寝着を(まと)ったラヴェルが押し出されるように現れた。

「ね……ちょっと付き合ってよ」

 あたしはそんな言葉を掛けて、あいつをチェストに(いざな)った──。