「おはようございます、ユスリハ」

 カプセルの(きわ)に腰掛けた、ツパイの弧を描く口元は変わりなかった。

「おはよう、おはよう、ツパイ!」

 思わずその小さな身体に抱きついてしまう。さすがに驚いたのか「おぉ」と小さく声を上げたツパイは、あたしの後ろ髪を撫でてくれた。

「無事でなかったのは、この髪色くらいだったようですね……安心しました」
「うん……でも髪はまた染めればいいし。あの……ツパイ、本当にありがとう。それから……ごめんね、あの時信じてあげられなくて」

 ツパイの肩に突っ伏していた顔をゆっくりと戻し俯いた。あの時信じられていれば……あんな恐怖も、皆に迷惑掛けることもなかったのに。

「いいえ。あの場で信じられる程、僕達には十分な信頼関係が出来ていませんでした。ですが、これからは……きっと──でしょう?」
「うんっ!」

 首を(かし)げたツパイの質問に、あたしはいつになくニッコリと、元気の良い返事が出来ていた。そんなあたしにあの時と同じ会話の返しが。

「救出された後、疲れて眠ってしまいましたか? さて……食事の前にシャワーでも浴びましょうか。ユスリハ、お先にどうぞ?」
「毎度すみません……」

 こめかみを掻きながら苦笑いで応える。急いで準備をし、シャワールームに駆け出すあたしへ、キッチンで背を向けたままのラヴェルは振り向いたのか……少し気まずさを残して挨拶出来なかったあたしには、それを確認出来なかった──。







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