「おまちどうサマ~! どぅお~スリリングな夜のフライトは!?」

 急に落下が引き止められ、と共に降ってきた相変わらずの明るい声に、思わず瞳をパチクリさせた。自分の上を占めるラヴェルの真上には白い大きな何かがあって、そのまた上から聞こえたのは、そう……タラさんの声。

「ユーシィ、身体を反転させられる?」
「う、うん」

 ラヴェルのお願いに宙に浮いた身体を百八十度、つまり彼に背を向ける方向へ回転させた。視界は下方向に森が見えるけれど、もはやそれは城内ではない。

「自分が支えるから心配しなくていい。目の前のバーを握って」
「うん……」

 あたしは言われた通り、眼の上に映った水平の金属棒に手を伸ばした。これ、タラさんが乗ってきたグライダーの操縦席下だ。飛び降りたあたし達は木々に触れる手前で、グライダーに救われたのだと察した。

 ラヴェルの右手はそのバーの端を掴み、左手は胸の下であたしを支えていた。少しだけ顔を(かし)げ、ラヴェルの表情を探る。それに気付かないのか敢えて流しているのか、真っ直ぐ前を捉える彼の視線はこちらに向けられることはなかった。