ウェスティの言った通り、日中食事をした天幕の隣には、大きなソファとその両端に可愛いランプが配されていた。腰掛けるややんわりと沈み、全身が包み込まれるような心地良さを(いだ)いた。背もたれに寄り掛かった視線の先には、部屋から見た満月が見事に収まり、それは眩しいくらいの輝きを放っていた。

 さて……彼は来るだろうか? 来たら……どう切り出そう?

 暗唱した質問を、音のない世界でひたすら脳内に焼きつける。が、心の準備が出来ない内に、背後から気配と足音と、あの優しい声が近付いてきた。

「具合は良くなったのかな? ちょうど良い風と月明かりだね」

 背中を流れる緊迫の衝撃。

「は、はい……結局あれから眠れなくて……えと、用意してくださってありがとうございます。とても座り心地の良いソファですね」

 笑顔を何とか作り出し振り向いた時には、もうウェスティはすぐ後ろに居た。

「隣に良いかな、お姫様?」
「も、もちろんです」

 そんなおどけた問い掛けに、ラヴェルの口調を思い出していた。もしかしたら……あいつのそういうところと愛称を付けたがるのは、小さい頃を共に過ごしたこの人の影響なんじゃないだろうか?

 あたしの即答で並んで坐した彼の長い脚は、スラリと組まれ流された。

「……ユーシィ」
「は、はいっ」

 って、そんなこと考えてる場合じゃなくて、会話の主導権を握らなきゃ!