『困難であることは判っています。ですが時間が経てば経つほど、探りを入れるのは難しくなるでしょう。貴女がこちらから聞いたことを隠しておくのも難儀でしょうし、かと言ってそれをネタにして質問しなければ、あちらの真意も計り兼ねる……その辺りは重々承知の上です。けれど何とかあちらの意表を突いてほしいのです。……僕達は、貴女を救い出したいのですよ』

 救い出したい──その気持ちを信じてあげられない今が辛かった。ズキンと心臓が痛んで、思わず目を(つむ)ってしまう。けれど数秒静かに呼吸をして、やがてあたしは瞼を開いた。意を決したようにピータンを見詰めた。

「分かった……とにかくやってみる。それでツパイ達を信じると決めた時、あたしはどうしたらいいの?」

 それを聞いたピータンの耳が小刻みに震えた。

『良く言ってくれました、ユスリハ。貴女はただ「ピータン!」と叫んでくれれば大丈夫です。これからピータンはウェスティに見つからないよう、極力貴女の近くに潜伏します。その叫びはピータンからラヴェルに届き、彼は貴女を救出に向かいます』
「うん……でも大丈夫なの? もし見つかったら……」
『大丈夫ですよ。救出を願っているのは、貴女だけではないのですから』
「ん?」

 他にも救われたい誰かが居る?

『ラヴェンダー・ジュエルです。あの石も本来の宿主の許へ還りたいのですよ。だからこそジュエルはこちらに味方をし、今もかなり巧みにこの交信をウェスティから守ってくれているのです』
「あ──」

 意思を持つ宝石──ラヴェンダー・ジュエル。

 もしもツパイの言葉が真実なら──やっと彼の許へ戻れるのだろうか? 正式な継承者──ラウル=ヴェル=デリテリート、いえ、ラウル=ヴェル=アイフェンマイアの許へ──。