十分なのか十五分なのか……あたしは息が切れるまで泣いていた。どうして泣いたんだろう……両親の死の真相から? 全てはウェスティに騙されているかも知れないから? ううん、違う……あいつの抱えているものがとてつもなく大きかったからだ……家族の死だけでも心壊れてしまいそうなのに……あいつは──……。

「ご、めん……ツパイ……」

 あたしは突っ伏していたテーブルから何とか顔を上げた。頬を流れる涙を無造作に(ぬぐ)う。ドレスの袖がもうびしょ濡れだ。

「きゃっ……!」

 途端ピータンがあたしの肩に乗り、まだ湿ったままの顔を舐め始めた。余りのくすぐったさに思わず笑みが零れていた。

『ついに……ピータンも貴女を認めたようですね』
「え?」

 ずっと静かに落ち着くのを待っていてくれたツパイの声が、肩越しのピータンから聞こえた。

『ピータンが貴女に近付かなかったのは、ヤキモチを妬いていたこともありましたが、本質はきっと貴女がラヴェルを認めていなかったからです。今のユスリハはラヴェルの気持ちを知り、彼に近付こうとしました。ですから……ピータンも貴女をラヴェルの仲間だと承認したのですよ』
「ピータン……」

 あたしは呼びながら、依然舐めることをやめないピータンを掌に移した。「ありがとう、ピータン」──そうお礼を言って微笑んだあたしに、ピータンの顔は同じ笑顔を表して「うん」と一つ頷いた気がした。