『ラヴェンダー・ジュエルの力は必ず「跡」を残します。ジュエルを身に宿していた先代王にもその力が残されていました。ウェスティの行動を追い掛け、その過ちにようやく気付いた王は、ウェスティを捕らえ封印し、王妃と共に地下の結界へ閉じ込めました。残念ながら……その命を奪い取ることまでは出来ませんでしたが』

 ツパイはあたしの落ち着きに気付いたのか、少し言葉を速めた。

『王はウェスティの抵抗と格闘の末、彼を拘束することには成功しましたが、その痛手と精神的打撃から僅か半月で亡くなりました。それ故ジュエルの宿主は居なくなり、結界内のウェスティを誰もどうにも出来なくなってしまったのです……ラヴェルが成人し、継承者となるまでの七年間は』
「それであいつは十八歳で継承したのね? なのに何で──」

 何故ウェスティは此処に居るの?

『先程話した「跡」が影響しているのですよ。それはウェスティの体内にも残りました。彼は封印されながらも、その力を温存していたのです。そしてジュエルがラヴェルに継承された後の二年半、目覚めたジュエルの力を地下で少しずつ溜め込んでいきました……誰にも気付かれないように。実は継承したラヴェルに対し、王家の家臣は皆口を揃えて、結界内のウェスティを殺すようにと諭しました。ですが……ラヴェルにはそれが出来なかったのです。誰にも相手にされなかった幼少期、例えそれが謀略であったとは云え、家族以外で一番近い存在だったウェスティを……その不覚が二度目の事件を招きました』
「二度目……?」

 ツパイの苦悩を悟ったのか、眠そうだったピータンがふと目を見開いた。