「そ、それに……おかしいじゃない? 継承者の種子って……あたしだって入るでしょ? どうしてあたしは殺されないのよっ、そうだったら──」
『貴女は……ウェスティに、正確にはジュエルに、花嫁として選ばれたからです』
「え……?」

 先程まであたしの崩れた調子に揺るがされていたツパイの口調は、再び抑揚のないものに戻されていた。だってウェスティにはタラさんが──。

『ウェスティは国から出る際に、継承者として最も近いラヴェルを、一度亡き者にしようと仕掛けたことがありました。が、その時は気付いたタラが全力で(かば)ったのです。タラを花嫁として傷つけることの出来なかったウェスティは、一先(ひとま)ず断念致しました。そして貴女を見つけた……それと共に、もはや自我に目覚めたタラは必要ないと考えたのでしょう。ウェスティは貴女以外、花嫁を生み出せる三家系の若者と、継承者を生み出せる王家の若者を全員殺し尽くすことに決めました。ですがその計画は、途中で一旦阻まれることになります──実の父親、先代王に』
「う……うん」

 タラさんとあたしを天秤に……それでも最後の言葉で、ほんの少し聞ける余地を生み出したあたしは、疲れたように腰を降ろした。今はまだ……何も信じなくてもきっといい。どれを信じるかは後で決めることだ。