『ウェスティが成人を迎えた十八歳、ラヴェルが十一歳の時です。通常ラヴェンダー・ジュエルの次代継承は、先代王の亡くなられた時点、次期王が成人していた場合にのみ行われます。その際まだ成人に達していなければ、城の奥にある保留庫にて、ジュエルは眠りに着くことになっています。ですが王は強引に、ウェスティの成人時、隠してきた彼を公表し、ジュエルを継承させると宣言しました。全ては……ウェスティの巧みな策略によって』
「う、そ……」

 ツパイの『物語』は全てウェスティを『悪』と決めつけていた。でも、今のあたしにはどうにも信じられることじゃない。これは真実なの? 誰かが嘘をついているの??

『優しく聡明な従兄と恋人……信じきってしまったラヴェルとタラに、反対意見は有り得ませんでした。ラヴェルは自身の継承権を放棄し、タラはジュエルの花嫁となることを承諾した。こうして国民の懸念は表面化されることなく捻じ曲げられ、事はウェスティの思うままに進められたのです』

 あたしは自分の両手を膝の上に戻し、ギュッとお互いを握り締めた。本当なんだろうか? そして……あたしもウェスティに騙されているの?

『大丈夫ですか、ユスリハ。此処まではプロローグに過ぎません。本題はこれからなのです。ヴェルに君臨したウェスティが初めに犯したこと……それが真に……凄惨な行為でした』
「……」

 大丈夫かなんて、大丈夫な訳がなかった。それでも今は聞かなくちゃ。そう思う気持ちが、あたしの瞳にピータンを映し出した──。