呆然自失したあたしへ、ツパイは「戻ってきて」と云わんばかりに畳み掛けた。

『良いですか、ユスリハ。『花嫁』になるには、お互いへの愛情が必要です。相手の全てを愛することが出来なければ、ジュエルの継承者を生み出すことは出来ません。仲良く一生を添い遂げる為、ヴェルでは年齢が近いことこそ重要とする伝承が生きています。ですから花嫁は必然的に継承者と近い年齢で生まれることを求められるのです。花嫁を提供出来た家系は、他の二家よりも繁栄を極めることが出来ましたので、この三家は常に()り合ってきた歴史を持ちます。今回も王妃がいつ王子を授かるのか、それが毎日の話題でした。ウェスティが王妃のお腹に宿った時、期間を置かずして女児を設けられたのはハイデンベルグ──つまりタラでした。彼女はウェスティの八ヶ月歳下です。ミュールレインも出産出来る世代の男女がおりましたが、その頃に子を得る家庭はありませんでした。そして僕の家……ユングフラウはその反対に、三年も先に女児を出産しておりました』
「う、うん」

 ツパイの声は自分の家の話になった途端、(しぼ)んだようにくぐもり小さくなった。あたしは耳を澄ましながら相槌を打ち、ちゃんと理解して聞いていることを主張した。