「ね、ツパイ……先に一つ……あの、ツパイが眠る前、本当にごめんなさい……ちゃんと向き合えなくて、ぼぉっとしたままで……」

 しばしの沈黙が挟まれ、やがて変わらぬ声が答える。

『いいえ、ユスリハ。こちらが悪いのです。貴女を連れ出したのはラヴェルであるのに、彼は何も答えなかった。そして僕も……だから貴女がああなったのは必然なこと……それでもどうか僕達を(ゆる)してください。ラヴェルは貴女から笑顔が消えることを、一日でも遅らせたかったのです』
「笑顔が消える……?」

 それは一体どういう……?

『これから話すことが、貴女にとって非常に酷な内容だということです。けれどそれを信じるか、ウェスティの言葉を信じるかは、どうか貴女自身で決めてください。僕は……ラヴェルもタラも、貴女のことが大好きです。もしもこちら側の言い分を信じられなくとも……それだけは忘れないでくださいね』
「ツパイ……」

 あたしは胸に込み上げるものを感じて、一瞬しゃくり上げるように涙が溢れそうになった。それを(こら)えてお礼を言う。本当は「あたしも大好きだよ」って返したかった。でも今は……どちらを選ぶのか決められていないのだ。感謝の言葉しか渡せなかった。