「ピィ、タァ~ン!!」

 左端の二枚窓を押し開き、思わず嘆きの言葉を吐き出した。室内の明るさに慣れた瞳には、外の光は眩しくてふと細める。その真っ正面から何かが物凄いスピードで近付き、咄嗟に瞼を思いきり(つむ)っていた。

「きゃっ!!」

 いきなり顔面を覆った毛むくじゃらに驚き、気付けば床に尻もちを突いていた。そのままとにかくその柔らかい物体を怖々(こわごわ)引っぺがす……って、ピ、ピータン!?

「もう~何処行ってたのー!? 心配したじゃないっ! あんなに此処に居てって言ったのに~!!」
『すみません、ユスリハ。城の構造が知りたくて、偵察に行かせていたのです』
「へっ!? ピータンが喋った!?」

 両掌の上の毛玉ピータンを凝視する。明らかに彼女からそれは聞こえたけれど、この声は……!

『とりあえず無事なようで安心しました。ウェスティの許も居心地は悪くなさそうですね? ……余り良いのも考えものですが』
「ツ……ツパイ!?」

 当のピータンは他人事の如く真ん丸な瞳を輝かせ、鼻をヒクヒク果物の匂いを嗅ぎ取っていた。



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