「どうやら……私の話を信じられないようだね?」
「え?」

 静止した手を見詰めるよう俯いていた顔を刹那上げる。淋しそうなウェスティの笑顔に、つい未だ決めきれない答えを投げ掛けていた。

「そ、そんなことないですっ。ただ……あの……どうして彼はそれを盗んだんですか? ウェスティは……どうやって、それを取り返したんですか?」

 どちらが正しいのか、どちらを信じればいいのか、やっぱり……どうしてもその迷いが表情に出てしまうんだ。でももうこれ以上彼を傷つけたくない。

「ふむ……ラウルは厖大(ぼうだい)な金貨を持っていなかったかい?」
「あ……は、い」

 まさか……?

「それが彼の目的だよ。この宝石は世界に唯一(ただひと)つしかない。更に美しい色と不思議な力を持つからね……そんな宝石、売れば高くつくだろう? 彼はこれを売って金貨を手に入れた。私はそれを探し出し、店から買い戻したんだ」
「そ……んな──」

 あたしが手に入れたあの金貨には、そんな汚い経緯があるの!?

「落ち着いて、ユーシィ。少しショックの強い話だったみたいだね。大丈夫だよ……これからは私が君を守る」

 席を立ち、テーブルの端を回ってあたしの横へしゃがみ込んだウェスティは、わなわなと震え出したあたしの上半身を抱き留めてくれた。

 誰でもいい……誰か本当は嘘だと言って──。

「可愛い人。ゆっくり呼吸をして。気持ちが鎮まったらまた食事を続けよう。少しテラスを歩こうか?」

 抱き締められたまま立ち上げられた身体が、更なる抱擁に包まれた。あたしは心の平穏を求めるようにその背に手を回し、伝わるぬくもりから真っ正直で真っさらな、本物の真実を見つけ出そうとしていた──。



      ◆第四章◆誰が嘘をついてるの!? ──完──