「さぁどうぞ、召し上がれ」
「はいっ」

 慌てて両手の先のフォークとナイフを握り締める。一応テーブルマナーは心得てはいるが、こんな豪勢な料理を目にするのは初めてだ。失礼のないように極力静かに食事を進める中、ふとウェスティが手を止め言葉を紡ぎ出した。

「私は王国ヴェルの、百五十四代目を継ぐ──予定の嫡子でね。本名はウェスティ=ヴェル=アイフェンマイアと云う」
「あ……はい」

 あたしも返事と共に彼を見上げた。

「ヴェルは代々我が一族の、その男子が継承を受けることになっている。その時王位と共に受け継ぐのが、この『ラヴェンダー・ジュエル』なのだよ」

 『ラヴェンダー・ジュエル』──淡い紫色の、瞳のような宝石。

「私は半年程前にその儀式を行なう筈だった……が、前夜ラウルに調整を頼んだ際ジュエルを奪われ、やっと取り返したのが数ヶ月前だ」

 調整──義眼として? 確かに……ラヴェルは王家直属の義眼師だと言った。

「そう……なんですか……」

 ラヴェル……本当に彼から宝石を盗んだんだろうか? もしそうならその目的は?