「義……眼……?」

 あたしの声はいつの間にか震えていた。両目とも彼自身の物だと思い込むほど自然な瞳であるのに、その右眼は義眼であり、そしてラヴェルが継承した……いえ、盗んだという宝石だなんて──!!

「食事が冷めてしまうよ。さぁ行こう」
「……」

 驚きで強張った背中が、柔らかく押すその力に従った。あたし達は並んで回廊を歩き、螺旋階段を昇り詰めて、やがて広々としたテラスに出た。振り向けば城の高い塔が青空を貫き、正面を進めば海のような樹海が足元に、波立つような枝葉の先を城壁へ向け打ち寄せている。

「おいで、ユーシィ。乾杯しよう」

 布のシェードが張られた一角に、テーブルと贅を尽くした食事が並んでいた。けれど給仕する者は特に居ない。思い出してみても城の中では未だ誰一人、従事する姿を見かけていないことに気が付いた。

「再びの出逢いに……乾杯」

 精密なカッティンググラスに注がれた、淡い桃色の食前酒を交わす。果実らしい仄かな甘みと酸味が、乾いた喉を潤した。向かい合わせに席に着き、ウェスティの背後に飛び交う白い鳥に目をやった。