「ずっと……会いたかったよ、ユーシィ」
「あっ……」

 受け止めてくれるだけだった筈の彼の腕が、ギュッとあたしを抱き締めて、思わず頬が染まり、全身が硬直してしまった。十年前とは違う情熱的な腕の力。どうしよ……重ねられた胸が熱い。

「あのっ──」

 恥じらうように幽かに揺らぐ小さな声で、ウェスティは慌てたようにあたしを自由にしてくれた。

「ああ、すまなかったね。苦しかったかい? つい嬉しくて……」
「い、いえ……」

 はにかみながら笑うウェスティを見上げて、あたしも吊られたように微笑んだ。

 先程飛行船に現れたホログラムと変わらない見目麗しい姿。それは十年前よりも少しだけ年を経て感じられたけれど、想像していた以上に若く見えた。漆黒の艶やかな長い髪と、薄紫色の宝石のような瞳。身長はあたしより頭二つほど高いから、ラヴェルより頭一つ分、ヒールを履いたタラさんと同じくらい。……って、どんな計り方なのよ……ツパイ・アイガー・タラさん・ラヴェル……みんな無事だろうか? あたしは……これからどうしたらいいの? 何を信じたらいいの??

「近くに屋敷があるんだ。其処で少し休むと良い」
「……はい」

 タラさんのように優しく肩を抱いたウェスティに連れられ、あたしは森の奥へと導かれた。



 ──「ユーシィ、必ず助け出すから」



 ラヴェル……あたしはあんたにとって、助け出す価値が本当にあるの──?