結局あたしはラヴェルの姿も飛行船の不時着も見届けられないまま、大きな樹の枝にカプセルごと宙吊りにされた。

 しかし……どうしてラヴェルはあたしを嫌っているピータンを預けたりなどしたのだろう? やっぱりこの子はあたしの見張り役なんだろうか?

 あたしの肩に乗ったピータンは、ラヴェルを心配するように飛行船の落ちた方を向いたままだ。よっぽどこの子、あいつのことが好きなのね。

 でも……どうしよう……。

 きっとその内ウェスティはあたしを迎えに来るのだろう。ピータン、見つかったら大変よね? それにあたしはそれでいいの? 十年前あたしを助けてくれたウェスティ。もちろん信じたいし会いたいし……ちゃんとお礼を言いたい。でも昨夜あいつの中に現れた『スティ』は、ウェスティじゃないと本当に言えるの?

 ブツブツ考えながらもあたしはどうにも出来ずにいた。何故なら……眼下の陸地はまだまだ下の方で、扉を開いて飛び降りるには遠過ぎる。助けが来なければ降りられないのだ。

「ユーシィ! 遅くなってしまったね……大丈夫だったかい?」

 突然現れた声に一瞬ビクッとしてしまった。振り向いた先には駆け寄るウェスティ。その刹那ピータンが瞬く間にあたしの腰のポケットに収まった。良かった……この子、ちゃんと分かってるんだ。

「心配しないで。飛び降りておいで」

 とウェスティはあたしの真下で両手を掲げた。僅かに不安は残るが、頷いて足元のロックを外す。開かれた扉からまずはブランケットを押し出し、余裕の出来た空間に真っ直ぐ身を立てた。スッと落ちてゆく感覚が、柔らかく包み込む抱擁に変わった。