「ラっ、ラヴェル! ラヴェル!!」

 あたしは気付かぬ内にあいつの名を叫んでいた。その口の動きに気付いたのか、ラヴェルも数回唇を開いたけれど、残念ながら何も聞こえない。あーもうっ、このカプセルって防音なの!?

「ラヴェルっ!!」

 やがてラヴェルはカプセルに追い付き、掌と足先をトンと着いた。いつものうっすらとした微笑は変わらない。その肩にはピータンがしがみ付いていてホッと胸を撫で下ろす。あたしを見下ろすようにカプセル上部に()まったラヴェルの右掌が、次第に黄金色の輝きを帯び、触れられたガラス面が急に溶け出した!

「ど……いう……こと……!?」

 彼の掌サイズに開かれた空間に、あいつは逆の手で掴まえたピータンを、何とか中へ挿し込んだ。両手で受け取ったあたしに、徐々に閉じようとするその穴から「ユーシィ、必ず助け出すから」──あいつの声も微かに挿し込まれた。

「ラヴェルっ──!!」

 あたしの声は届いただろうか?

 どうしてそんなに(はかな)そうな笑顔をするの?

 あいつはカプセルを足場にと力を込めて、飛行船へ向けて飛び去った──。



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