『どうやら随分と洗脳されてしまったようだね。大丈夫、私がちゃんと元に戻してあげよう。ユーシィ……少し手荒いけれど、強硬手段に出させておくれ。とにかく早くシューターで逃げるんだ。良いね?』

 その声と共に突然飛行船が揺れ出した。同時にウェスティの笑顔が乱れ、プツンと画像が消え去った。船首が徐々に頭を下げ、グラスがテーブルを滑って落ちる。

「さすがにダメか……アイガー、ツパのカプセルに入って! ロックしてボタンを押すんだ!!」

 寝台を守るようにずっと船尾でこちらを見守っていたアイガーは、ラヴェルの声に即座に反応を示し、途端言われた通りの行動に移った。って、アイガー、いつの間にそんなことを覚えたの!?

「ユーシィ、ごめん……とりあえずシューターで逃げてくれ……タラ! タラも右下のシューター使って!」
「ちょ、ちょっと待って! タラさんがあんたのシューター使ったら、あんたは!?」

 斜めに傾いてゆく床を心配しつつ焦燥の色を見せたラヴェルは、あたしの手首を取ってカプセルへと引っ張り寄せた。タラさんは言われたことに頷き、ラヴェルのカプセルに頭を突っ込む。確かにタラさんのカプセルは荷物が詰まっていて使えないけれど、それじゃああんたはどうするのよ!?

「自分はマントを使えるから心配しなくていい。とにかく入って! ロックしてボタンだよ!! ピータン! ユーシィのカプセルに入るんだっ、ピータン!!」
「マント!?」

 ラヴェルは答える間もないといった様子でピータンを探し、あたしは強引にカプセルに入れられてしまった。

「あいつ……マントを取りに行ったのか……ユーシィ、ピータンは待たなくていい! すぐ脱出してくれ!!」
「ラっ──!」

 あいつの名を呼ぶ前に、扉は閉じられてしまった。仕方なくロックして、シュートボタンを思いっきり叩く。心の準備が出来ない内に、あたしは空を飛んでいた──。