「ラウル、落ち着きなさい。これじゃあ、ウェスティの思う壺ヨ」

 今にも映像に殴り掛かりそうなラヴェルに近付き、肩に手をやったタラさんは、今でも変わらぬ自信ありげな表情をしていた。

『タランティーナ、お久し振りだね』
「あら、ワタシを『ティーナ』と呼ぶのはアナタだけだったのに、随分お見限りじゃない?」

 長い(まつげ)に彩られた妖しい瞳をウェスティに向ける。其処に僅かな淋しさが感じられた。

『そんなこともあっただろうか……とにかくユーシィを返していただくよ。ユーシィ……脱出用シューターで外へ出ておくれ。私が必ず見つけてあげるから』
「えっ……」

 そのお願いに思わず三人の姿を振り返り、誰の指示に従うべきなのか迷ってしまった。あたしは……ずっとラヴェルに騙されていたの? それとも嘘をついているのはウェスティ? でも……そんなこと……どっちも信じたくないっ!

「ユーシィ……自分は嘘はついていない」

 ラヴェルはそう言って懇願するように右手を差し出した。でもあんたは……沢山隠してきたじゃない!! 自分の気持ちを押し殺して、他人の為に犠牲になって……それを嘘とは言わないの!?

「あたし……あたし、は……」

 見える全員から遠ざかろうと、あたしは思わず後ずさりしていた。誰を信じていいのか分からない……誰も……信じたくない? 信じられない??