駆け寄ったあいつの数歩手前で、あたしは唖然として立ち止まってしまった。タラさんは十センチ以上はあろうかと思われる真っ赤なピンヒールを履いているとは云え、明らかに頭一つ分ラヴェルより背が高く、グラマラスな体形が一目で分かる程の、ピッタリ身体に密着した赤い革のつなぎを(まと)っていた。スタイルの良さに負けない整った顔立ちと、美しく流れる亜麻色のウェーブヘア、そして……溢れそうな胸は半分までファスナーが降ろされていて、その豊満なバストにあいつの顔面は……(うず)められていた!!

「くっ苦しいって! 可愛いって思うのなら、この窒息死必至な挨拶はもうよしてくれ」

 熱烈な抱擁を何とかほどいたラヴェルは、本当に死にそうだったと訴える表情で息をつき、キッと横目でタラさんを睨みつける。

「ツレないこと言わないのー、って! イヤ~ン、可愛い~!! 誰、このお人形さんみたいなお嬢ちゃん! アナタついに彼女出来たの!? ヤルわネ~でかした! さすがはタラねえの弟だわっ!!」
「えぇ……──!?」

 ラヴェルの後ろのあたしに照準を移したタラさんは、ホッと胸を撫で下ろしたラヴェルの横をツカツカと歩いてきて……え! ちょっ……「んんっ!!」

 あたしの顔面もその窒息死必至な挨拶の餌食になっていた──。