ハナエがそう話し終えた刹那、ガチャンと大きな音が鳴る。ツヤが箸を落としたのだ。その目は大きく見開き、体は小刻みに震えている。

「ツヤさん?」

「ツヤ?」

イヅナたちが心配する中、ツヤは目から涙を零し始める。そして、口を開いた。

「……姉さんだ。それはきっと、姉さんのことだ」

そう言い、ツヤは泣きながら走って行く。イヅナが後を追うと、ツヤは「雪髪姫」と書かれた墓石を抱き締め、声を上げて泣いていた。

「イヅナ、そっとしておいてあげよう」

ギルベルトに言われ、イヅナはゆっくりと頷く。ツヤも逢いたい人にようやく逢えたのだ。イヅナの瞳も潤んでいく。

桜が散る村で、二体の妖の想いが叶った。